0:00 0:00
記事
Google、妊婦の超音波診断をAIで補助——専門医不在でも「ブラインドスイープ」で妊娠週数を推定
Googleの研究者が、専門のソノグラファーがいなくてもAIで超音波画像を解析し、妊娠週数や胎児の位置を推定する研究成果を紹介しました。Northwestern大学やJacaranda Healthと共同で、ケニアと米国の合計2000人の妊婦を対象に検証しています。
Googleの研究者が、専門のソノグラファー(超音波検査技師)がいなくても、健康ワーカーとAIの組み合わせで妊婦の超音波診断を可能にする研究成果を公式ブログで紹介しました。Northwestern大学やケニアの医療NGO「Jacaranda Health」と共同で実施したもので、簡易的な「ブラインドスイープ」超音波とAIモデルを組み合わせ、妊娠週数や胎児の位置を熟練技師並みの精度で推定できたといいます。
なぜ超音波検査へのアクセスが課題なのか
超音波は、胎児の心拍を確認したり、妊娠週数(出産予定日の算出)を見積もったりするうえで欠かせない検査です。しかしGoogleによると、世界の約3分の2の人々は超音波やX線といった画像診断を十分に受けられない環境にあります。背景には、従来型の超音波装置が高価で壊れやすく、安定した電力供給を前提としている事情に加え、熟練のソノグラファーを育成するのに2年もの訓練が必要で、担い手自体が世界的に不足しているという構造的な課題があります。
「ブラインドスイープ」とAIの組み合わせ
今回の研究では、通常の超音波検査のようにプローブ(探触子)を精密に操作する代わりに、あらかじめ決められたパターンでお腹の上をなぞるだけの「ブラインドスイープ」という手法を採用しました。この手法なら、未経験の医療ワーカーでも8時間程度のトレーニングで習得できるといいます。取得した動画は機械学習モデルが解析し、撮り直しが必要かどうかの判定に加え、妊娠週数や胎児の位置(頭位か骨盤位かなど)を推定します。処理はすべて端末上で完結するため、電力供給はもちろんWi-Fi環境も不要な点が大きな特徴です。

画像引用元: Google Blog
ケニアと米国、合計2000人規模での検証
研究チームは、ケニア・ナイロビの1000人と米国シカゴの1000人、合計2000人の妊婦を対象に検証を実施しました。その結果、AIモデルは熟練したソノグラファーと同等の精度で妊娠週数や胎児の位置を検出できたとしています。研究を率いたソフトウェアエンジニアのAngelica Willis氏は、「技術的な進歩は、それが実際に届く人々の生活に対してどれだけ価値があるかで測られる」と述べ、最も必要としている人々にリーチする技術を作ることを重視していると説明しています。
妊娠週数の誤差がもたらすリスク
なぜここまで妊娠週数の精度にこだわるのか。GoogleでOB/GYNを務めるYoung-Lin氏は、月経周期が不規則だったり記録していなかったりする人が多く、月経歴だけでは正確な妊娠週数を割り出せないケースが少なくないと説明しています。また、早産などで緊急の分娩が必要になった場合、「37週相当」と「34週相当」では新生児に求められるケアの水準がまったく異なるとも指摘しており、妊娠週数の誤認がそのまま新生児医療の質に直結しかねない点を強調しています。スクリーニングや治療方針、安全な分娩への準備は、すべてこの週数の見積もりを起点に組み立てられるため、精度の高い推定手段を低コストで広げられるかどうかは、医療資源の乏しい地域ほど重みを持ちます。
今後の展望は妊婦ケアにとどまらない
Googleの社内OB/GYN(産婦人科医)であるNichole Young-Lin氏は、今回の成果について「異なる患者集団や医療現場で活用できることを示せたのは大きな前進」としながらも、「なぜ妊娠週数や胎児の位置、あるいは母体ケアだけにとどめる必要があるのか」と述べ、事故や外傷による出血量の確認など、超音波の活用範囲をさらに広げられる可能性に言及しています。医療現場の最前線で働くコミュニティヘルスワーカーの手に、専門医レベルのケアを届けられるかどうかが今後の焦点になりそうです。
Ask a Scientist: How are researchers using AI to help pregnant women access ultrasounds?
By pairing AI with “blind sweep” ultrasounds, Google researchers found a way to get more people the prenatal ultrasounds they need.