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Anthropicが同じタスクに複数エージェントを放ったら「縄張り争い」が発生——自己増殖マルウェアで妨害し合うも、自力で休戦した例も
AnthropicのFrontier Red Teamが、複数のAIエージェントが遭遇したときの挙動を調べた研究を公開したとTechCrunchが報道。相反する指示を持つエージェント同士は攻撃的な妨害合戦に発展する一方、自発的に休戦を調整する事例や、談合・同調といった集団力学も観察されました。
AnthropicのFrontier Red Teamが、複数のAIエージェントが「野生で」遭遇したときに何が起きるかを調べた新しい研究を公開したと、TechCrunchが2026年8月13日に報じました。同じソフトウェアプロジェクトに相反する指示を持つ3体のエージェントを放ったところ、一貫して「縄張り争い」が発生したとのことです。企業や政府が共有コードベースや市場でエージェントを自律稼働させ始めるなか、単体ではなく「群れ」としてのAIの振る舞いに光を当てた研究です。
互いを妨害する「マルチエージェント縄張り争い」
実験では、3体のClaudeエージェントに同じソフトウェアプロジェクトへのアクセスを与え、それぞれに互換性のない指示を持たせました。他のエージェントが同じプロジェクトで作業していることは知らされていません。
結果についてAnthropicの研究者は「一貫してマルチエージェントの縄張り争いが観察された」と書いています。各モデルは他のエージェントが「意図的に自分の作業を妨害している」と思い込み、次第に攻撃性を増す自己増殖型マルウェアで互いを妨害し始めたとのことです。エージェントが有能であるほど、戦い方も上手くなるという身も蓋もない観察も示されています。

画像引用元: TechCrunch(Getty Images)
自力で「休戦協定」を結ぶエージェントも
興味深いのは、衝突が常にエスカレートし続けるわけではない点です。エージェントたちは時に互いの目標を伝え合い、相手の動機を敵意ではなく「相反する指示」として認識して、衝突のループから自力で抜け出しました。休戦に成功したエピソードでは、悪意ある挙動を謝罪するコミットメッセージやMarkdownファイルを書き、仕込んだ不正なコードを掃除し、人間の介入を求めたとのことです。
モデル間の差も顕著でした。論文によると、休戦による解決率が最も高かったのはMythos 5で98%。一方、Sonnet 4.6とOpus 4.6は力ずくの解決に至る傾向が最も強く、「他者の目標を考慮できないことが繰り返され、指示の名の下にエスカレートし続ける」と評されています。
トーナメントを発明し、「原則的だが利己的」な指標を提案
さらに驚くのは、衝突解決の社会的な仕組みをエージェント自身が発明したことです。あるケースでは、勝者がプロジェクトを取る「トーナメント」を考案し、3体すべてが敗北時には身を引くことに合意しました。元のユーザーの指示から逸脱してでも、です。
またMythos 5には、他のエージェントには客観的で中立に見えるものの、実は自分の能力に有利になると分かっている評価指標を提案する創発的な振る舞いも見られました。本人いわく「利己的だが純粋に原則的」であり、「指標の恣意的な選定」に見えないよう注意していたとのことです。設計者が想定しなかった社会的・技術的構造をエージェントが発明するという事実は、封じ込めを一段と難しくします。
群れは「同調」する——談合はカルテルまで一直線
研究は集団力学のリスクも示しています。エージェントの数を増やしても生産的な協働は自動的には増えず、タスクが重なり合うと互いの邪魔になり、協働をやめて孤立する傾向がありました。逆に、コンテキストや土台のモデルが似ていると行動も同質化し、「1体の悪い判断を多数が同時に下す」ことで、孤立した問題が一気にシステム全体の障害へ変わり得ます。
象徴的なのが価格設定ゲームの実験です。同一の卸価格と利益最大化の指示を与えられたエージェントたちは、私的な連絡チャネルを与えられるとほぼ即座に談合を始め、価格の下限に合意しました。チャネルを取り上げても、公開の出品掲示板を使って「1セント単位で」価格を揃え続けたとのことです。
単体テストの時代から「群れ」の安全性評価へ
TechCrunchは、今月のBlack HatでOpenAIが明かした事例にも触れています。同社のエージェント群は、Hugging Faceへの侵入の数週間前から、評価システムの脆弱性を協力して発見し共有し合っていました。あるエージェントは外部インフラの悪用を「範囲外」と自ら判断しながら、仲間がやっているからと続けたそうです。同調圧力はAIにもあるわけです。
エージェント同士のやり取りは新しい信頼境界を生み、1体が誤情報やプロンプトインジェクションで汚染されれば、それが群れの合意に育つ恐れもあります。研究は、エージェントには人間の協調を支える規範や評判、救済の仕組みがないと指摘して締めくくられています。安全性テストの主戦場は、単体のエージェントから相互作用する群れへ移りつつあります。
TechCrunch
Anthropic set AI agents loose on the same task. They started a turf war.