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中国AIブームの中心地は内モンゴルの町——100拠点近いデータセンターが集積
中国・内モンゴル自治区のウランチャブに、AIブームを支えるデータセンターが100拠点近く集積しているとWIREDが報じました。冷涼な気候と再生可能エネルギーが誘致の決め手になっている一方、深刻な水不足が新たな課題として浮上しています。
WIREDは2026年8月21日、中国・内モンゴル自治区の都市ウランチャブが、AIブームを支えるデータセンター建設ラッシュの中心地になっていると報じました。人口約150万人のこの町では、2016年以降に開設または建設中のデータセンターが100拠点近くにのぼるといいます。中国企業が計画するプロジェクトの規模は数百万平方メートルに達すると伝えられています。
なぜウランチャブなのか——気候と土地、そして「意外な近さ」
ウランチャブが選ばれている理由は複数あります。内モンゴル高原の高地に位置し、冬は長く寒冷なため、サーバーを冷却する電力コストを抑えられる点が大きな利点です。加えて広大な土地を確保しやすいことも進出の後押しになっています。WIREDによれば、注目すべきはデータセンターを建設している主体の変化で、これまでクラウド事業者から計算資源を借りていた中国のAI企業自身が、初めて自社インフラへの大規模投資に踏み切っているといいます。中国の人口密集地である東海岸からは遠いものの、北京など主要都市圏からの距離は欧米のデータセンター拠点よりもむしろ近く、当初課題だった通信の遅延も、東海岸との接続改善によって和らいできているとされています。

画像引用元イメージ: WIREDの報道を基に編集部で作成
深刻化する水不足という新たな壁
一方で記事が指摘するのは、水資源の乏しさという構造的な問題です。ウランチャブの年間降水量はおよそ14インチ(約356ミリ)しかなく、米国コロラド州デンバーと同程度の乾燥地域にあたります。地元政府はすでに、急増するデータセンター群に十分な水を供給することに苦慮しているといいます。内モンゴルはAIブーム以前の10年以上前からデータセンターの集積地であり、Huaweiは2016年に、Appleもその3年後に同地で最初の拠点を稼働させています。ただし、当時と現在とでは需要の規模も、水資源への圧力も大きく異なっている点に注意が必要です。
再生可能エネルギーとの「一石二鳥」戦略
中国政府がウランチャブでのデータセンター建設を歓迎するもう一つの理由が、再生可能エネルギーの余剰供給力を吸収できる点です。カーネギー国際平和財団のシンクタンクでディレクターを務めるデイミアン・マー氏は、これを政府にとっての「一石二鳥」の戦略だと説明しています。米国とのデータセンター建設ペースの差を縮めながら、同時に再生可能エネルギーの需要も増やせるという構図です。
- 立地の強み: 高地・寒冷な気候で冷却コストを抑制、広大な土地を確保しやすい
- 投資主体の変化: クラウド借用から中国AI企業自身によるインフラ投資へ
- 課題: 年間降水量約14インチという水資源の乏しさ
- 政府の思惑: 再生可能エネルギーの余剰供給力吸収とデータセンター建設ペースの両立
もっとも、専門家はこの「AIデータセンターと再生可能エネルギーは理想的な組み合わせ」という見方を単純化しすぎないよう警告しています。調査を行ったストコルズ氏によれば、ウランチャブで使われる電力のうち約37%は依然として石炭由来だとみられるといいます。マー氏は「内モンゴルは長らく中国のウェストバージニア州、つまり石炭の国だった」と述べ、地域が石炭から風力・太陽光への転換を急いでいるものの、そのペースがどこまで速まるかは不透明だとしています。
AIインフラの地理的分散から読み取れること
ウランチャブの事例は、AIインフラの立地選定が単なる土地や電力コストの問題にとどまらず、水資源や既存のエネルギー構成といった地域固有の制約と密接に絡み合っていることを示しています。中国国内でAI企業自身がインフラ投資に踏み出す流れが今後も続けば、同様の課題を抱える内陸部の他地域にも建設ラッシュが波及する可能性があります。データセンターの電力需要や水使用量に関心を持つ読者にとって、ウランチャブは今後のAIインフラ動向を占ううえで注視すべき先行事例になりそうです。
The Unlikely Place at the Center of China's AI Boom
Cheap energy, abundant land, and proximity to Beijing have turned a city in Inner Mongolia into a crucial hub for data centers.